Osaka Gardening Journal

園芸業界の中の人が書きます

日長中性パンジーの話 サカタのタネ

サカタのタネ100周年記念特設サイトのアーカイブからまた育種の話を少し紹介します。

 

Episode 06 パンジー|サカタのタネ 100周年記念特設サイト PASSION in Seed 100 years

 

不勉強にして全く知らなかったのですが、パンジービオラはもともと冬は咲かない花だったんですね。秋と春は咲くけど短日条件になる冬は花を休む植物だった、と。それが品種改良によって秋から春まで咲き続ける植物になったわけですね。

 

言われてみれば宿根の黒葉ビオラ・ラブラドリカとか、パンダスミレなんかも冬は花を休みますよね。パンジービオラもそうだったのか。

 

最初は春だけ咲く花だったパンジーに、秋にも咲く品種が出てきて、ついに冬も咲くようになって今に至る、と。

冬も花を休まないパンジーサカタのタネが発表したのは1998年だそうです。けっこう最近ですね。

 

園芸店の店頭にいると、冬も咲き続ける花はありませんか、パンジービオラ以外で、とよく聞かれます。なかなかないんですよね、他には。「う~ん、ないのかなあ」とか「なんでないの?」と不思議そうに、不満そうに首をかしげるお客様も多いです。

 

そもそも冬も咲き続ける花があること自体、不思議なことなのかもしれません。だって冬には虫がいないんですから。多くのお花は虫媒花といって、花粉を虫に運んでもらうお花です。そのために花を咲かせている場合が多いです。鳥媒花というのもあるそうで、ツバキなどは鳥に花粉を運んでもらうためにお花の奥に蜜を隠してあるのだとか。

 

キンギョソウやストックなど、この時期に出回わる秋~春の主役花もお花を休む時期がけっこうありますが、いずれ品種改良されて冬も咲き続ける花になるのかもしれません。種苗メーカーの人、がんばってください。

ZOOM商談会のはなし2 終えてみて

少し前に書いたZOOM商談会、終わってみて思ったことを書きます。

 

全体の感想としては、現状としては完成度が低かったです。

主催者側の皆さんが不慣れなこともあり、取り組みを私は支持しますが、課題は山積。改善点は無数にありました。ぜひこれを機会にネットを活用した商談、商品説明、情報発信や連携がもっと盛んになって欲しいと思うので、自分なりに思いついた改善点を列記したいと思います。

 

まず、これをZOOMでやることの意味はあるのか?という問題がありました。

実際にやってみると、ほとんどの場合、生産者側が一方的に商品説明や会社説明を行うセミナー形式になりました。持ち時間はだいたい30分ぐらいなのですが、カタログに載っているような一般的な情報をしゃべるだけの内容になりがち。工夫しておられる生産者さんもいらっしゃいましたけれど。文字や画像による情報を読む方が早く、音声で語るとすごく時間を食ってしまいます。動画の画質も悪いので、商品自体もそんなによく見えない。栽培試験などの専門的なデータが公開されることもほとんどなく、特別な情報はほとんどありませんでした。

そのうえ双方向のコミュニケーションを行う余裕はなく、在庫状況や納品予定など、商談は全く行えないのでした。チャットで質問などしてみても、主催者側にはそれを見る余裕もほとんどなく、PCやZOOMの操作に四苦八苦しているうちに時間が過ぎてしまいます。

商談会なので、仕入れ値などの情報を発信することもあります。なので誰もが見れる形式では行えない。クローズした形で行うためにZOOMを用いたのは理解できます。

一方で商談会と言いながらも一方的に動画を配信しているだけの状態になっていました。これのためにわざわざスケジュールを調整して、みんなが同じ時間に集まって行う必要があるのか?

改善点としては、

  1. 根本的に知識や計画に不足があった。youtubeや、中小企業向けのクラウドサービスについて基礎知識のレベルを上げる必要がある。PCなどの基本スキルは若手を活用すれば良い。経営幹部クラスの年寄がスキルまで勉強する必要はないが、利用できるネットサービスについて経営幹部クラスの人が勉強しないと、部下にやらせるにしてもマネジメントができない。戦略が立たない。
  2. 商品説明はバイヤーが予習できるように事前に動画配信や資料配信(PDF)などによって済ませる。本番では行わない。レジュメなども事前配信した方が良い。本番の時間はとにかく貴重。卸値や発注単位、納期などもレジュメに空欄を用意しておいて、当日バイヤーが記入する方式にした方が良い。バイヤーが書くのに忙しくなりすぎると話を聞いてもらえないし、画面を見てもらえない。質問なんかするヒマもない。双方向のコミュニケーションにはならず、だから盛り上がらない。
  3. 一般的に、多くのセミナーでは30分という時間は質問コーナーのサイズ。当日は質問や意見交換、情報交換などコミュニケーションの場にした方が良い。そのためにも、事前に資料の配布とともに、質問を募集した方が良い。
  4. 主催者側、生産者側でもっと多くのスタッフを参加させる。チャットの対応係はいた方が良い。
  5. ZOOMのチャットは個人宛にメッセージを送れるので、主な市場関係者(卸売りの人)も参加させてその場で注文取りをさせるべき。
  6. ZOOMの中で注文を取らなくても、PCのデスクトップに別サイトを別ウィンドウで開かせて注文を取る方法もあるのでは。最近はスマホのLINEで受注している市場もあるし。
  7. 市場関係者の参加が少なかった。ZOOMに参加できる人数は限られているので遠慮した可能性もあるけれど、それなら裏方専用で別のZOOM会議を同時開催すればよい。
  8. ネットの活用が園芸業界全体にとってプラスになるという認識を広める必要がある。リモートでなければ、以前は会場を用意するコスト、スタッフが現地へ行く交通費など、膨大な費用が発生していたけれど、リモートで行えるなら全国から必要なスタッフが簡単に参加できるはず。参加者が少なかったのは残念だった。

思いつくままメモしてみました。

 

ショックだったのは当日バイヤーの参加者が少なかったことでした。

そして商談会はあまり良い内容にはならなかったので、不参加のバイヤーは「それ見たことか。俺はあんなもの無駄だとわかっていたぞ」と言うのかもしれません。でも私は新しい道を開こうとなさった主催者はじめ、関係者各位と、当日参加されていたバイヤーさんたちの側を支持します。価値ある一歩だったと思っております。

 

みなさまご苦労様でした。陰ながら応援しております。

キツネノメマゴ ピンクネックレス

キツネノメマゴ ピンクネックレスというお花がよく売れています。毎年売り切れる人気品です。主役にはならないけど、可愛すぎる脇役。

 

育て方などを調べても情報は少なめです。

 

happamisaki.jp-o.net

学名が正しいのかどうかも定かではないのだけど。

 Justicia procumbens var. hayatae

となっております。

 

キツネノマゴ科キツネノマゴ属、となっているんですが、野草のキツネノマゴは一年草なので、人によってはキツネノメマゴを一年草として紹介しています。

見た目、耐寒性が無さそうに見えるのが心配。耐寒性はマイナス3度まで、というのが定説みたいですね。霜には当てないように軒下での管理が推奨。大阪市周辺ぐらいなら問題ないレベルの強さ。

自分でも一年以上栽培したわけではないので、これが本当に多年草と言えるのか、確信が持てません。

暑さには強いと言われてますが、流通するのは涼しさを感じるぐらいのシーズンが多いです。春と秋。

 

ピンクネックレスについて調べた限りでは、育てやすい多年性植物ということで見解は一致しているようです。寄せ植えの脇役として、あるいはグランドカバープランツとして、大人気のピンクネックレス。花期も3~11月と長いです。

 

育て方など少し研究してみようと思います。現状は研究不足なので検討課題としておきます。

プリムラの話

タキイ友の会の会報誌に、原種プリムラがいくつか紹介されていたので興味を持ちました。さすがに大阪では夏越しが難しいと思うのですが、秋冬シーズンにはプリムラは主役級ですから、ちょっと調べてみました。

 

プリムラをざっくり大別すると、

  1. 花壇やプランターでよく利用されているジュリアンやポリアンサ、マラコイデス
  2. 鉢花として普及しているオブコニカなど
  3. 宿根草山野草として利用されている原種
  4. プリムラとはあまり言わないけど、日本のサクラソウ

という感じでしょうか。

 

原種のひとつ、プリムラ・エラチオール(Primula elatior

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プリムラ・エラチオール

プリムラ・ポリアンサの交配親のひとつ。見るからに、って感じですね。

 

ぜひ育ててみたいと思ったのですが、ざっとネットで調べてみた感じでは、夏越しが難しそう。今のところ大阪で育てる自信なし。

 

タキイでほかに紹介されていたのは、プリムラ・べリス、プリムラ・デンティキュラータ、プリムラ・ビアリーなど。いずれも宿根草メーカーのカタログで目にしたことがあります。なんというか、マニア向けですね。

 

これら原種のプリムラ類は寒さには強いけど暑さには弱い宿根草です。最近の猛烈に暑い夏、まして大阪の夏を越せるんでしょうか。「耐暑性:中」みたいな書かれ方してる場合が多いんですけど。いつか育ててみたいなあ。

宿根草花壇のハウツー本でもプリムラ系は滅多に紹介されていません。東北地方とかならともかく、関西や中間地では育てにくいのだろうと推測。

 

そんなわけで原種プリムラを活用した宿根草花壇は未来の検討課題としておいて、普及している園芸種の話です。

 

プリムラについていろいろ調べているうちにいくつか面白い記事を見つけました。参考までに紹介しておきます。

 

Garden Storyさんの記事。プリムラ類の概要です。矢沢秀成先生が書いておられます。要点がまとまっていてわかりやすい。

gardenstory.jp

サカタのタネさんの育種のエピソードが面白いです。

Episode 11 プリムラ|サカタのタネ 100周年記念特設サイト PASSION in Seed 100 years

100周年記念特設サイトのアーカイブなのですが、19個のエピソードすべてが興味深い話ばかりです。おすすめ。

プリムラ・ジュリアンはサカタのタネさんが1981年に発表した品種だそうです。日本が世界に誇る品種ですね。

 

ジュリアンに似てますが、性質が強健で見た目もなんかゴージャス、ということで最近人気になってきているベラリーナ。ベラリーナでさえ大阪の夏越しは簡単ではないと思いますけど。

www.ogis.co.jp

おぎはらさんの楽天市場店には植物の詳しい説明が載ってます。ベラリーナの説明が勉強になりました。イギリスで作出された、割と新しい品種で性質は強いけどやや晩生で、正月ぐらいにならないと咲かない、とのこと。

item.rakuten.co.jp

 

そして鉢花のプリムラ。最近人気のウインティー。何系になるのか、あんまり教えてくれないんですよねえ、メーカーの人。

www.suntory.co.jp

 

こうして見ると、プリムラって多年草なんだけど、本当に多年草として育てているのは山野草の愛好家ぐらいなのかもしれませんね。たまに「ジュリアンを冬越しも夏越しもさせてるのよ」っていうお客さんの自慢話を聞きますけど。

 

もっと精進して原種プリムラを使いこなせるようになりたいです。

ZOOM商談会のはなし

園芸業界では毎年この時期、重要な展示商談会があります。八ヶ岳山麓で開催されるフラワートライアルジャパンです。近辺の大規模生産農家の施設などを借りて、商品の実物などを展示して全国のバイヤーを迎えます。植物のバイヤーにとっては最も重要な展示会です。秋口に開催されるこの商談会では翌春の商材が扱われたりもしています。人気の商品は受注生産のものも多く、生産力も限られているわけですから、早々に完売御礼となってしまいます。

 

今年はこの商談会がコロナの影響で初のオンライン開催となります。同様の事例は他の展示商談会でもすでにあり、ZOOMを利用して生産者の設備を案内してみたり、新しい取り組みが方々で始まっているようです。

 

園芸業界の関係者は高齢化が進んでいて、特に小さな会社のバイヤーは社長さんなど50代以上の偉い人がやっている場合が多く、PCとかスマホとか苦手な人が多いです。定年なんかなくて、60代、70代の人も珍しくありません。さすがにZOOMへの適応は難しいらしいです。これまでのところ、あまりうまくいってる感じはしません。

 

園芸の生産地は全国に散らばっています。大阪で売る花だからといって関西の産地で作っているということはあまりありません。植物が好む気候に合わせて、適した地域で生産が行われています。

 

たとえばシクラメンは北海道、長野などの冷涼な地域が多いです。

当然、観葉植物は沖縄や鹿児島あたりが多いです。

 

バイヤーが産地を調査し、生産者を見極めようと思った場合、これまでは全国の産地に足を運んでいました。小さな園芸店でも、こだわっている店はそういうことをやってきているんです。立派なことですが、さすがに効率が悪い。オンラインでそれができる状況になってきているはずなのに、まだまだ実現してはいません。

 

コロナをきっかけに新しい扉が開かれるのかどうか、今月末に開催されるフラワートライアルジャパンのZOOM商談会は試金石となります。

 

変わって欲しいぜー。